2017年にロックの殿堂入りしたロックバンド ”ジャーニー / JOURNEY”。
記念式典では、絶縁状態になっていた元ボーカルのスティーヴ・ペリーが登壇してスピーチを行いました。
演奏への参加は辞退し、現在活躍中の後任ボーカルに委ねた姿が感動的でした。(文中敬称略)
ジャーニーのボーカル”スティーヴ・ペリー”ソロ活動と脱退
1973年に結成、1980年前後にブレイクしたアメリカのロック・バンド ”ジャーニー / Journey” 。ジャーニーの黄金期にボーカルとして活躍したのは ”スティーヴ・ペリー / Steve Perry” でした。
スティーヴ・ペリーは、バンドと並行して、1984年にソロ活動も始め「オー シェリー」等をヒットさせます。
teve Perry – Oh Sherrie (Video)
1985年のチャリティソング ”ウィー・アー・ザ・ワールド / We Are the World” にもソロで参加したスティーヴ・ペリーは、ケニー・ロギンスとダリル・ホールに挟まれた順番で歌います。
U.S.A. For Africa – We Are the World
ウィー・アー・ザ・ワールドに参加した翌年の1986年、スティーヴ・ペリーは、心労を理由にジャーニーを脱退してしまいます。「母親を失ったショック」と言われています。
ジャーニーは、スティーヴ・ペリー復帰で再活動→再度脱退へ
スティーヴ・ペリー脱退後に空中分解状態であったジャーニーでしたが、10年後の1996年にスティーヴ・ペリーが復帰して再活動を始めます。
ニューアルバム『トライアル・バイ・ファイアー』は全米アルバムチャートで3位のヒット作となりました。
しかしスティーヴ・ペリーが体調不良により、1998年に再び脱退してしまいます。
スティーヴ・ペリーは(股関節の負傷によって歩くのも困難な状態になりながらも)手術に踏み切らない→他のメンバーは「手術かボーカル交代か」の決断を迫る・・・そんなトラブルがあったとのこと。
ペリーはオフ中ハワイでハイキングをしていた際に股関節を負傷、これが歩くこともままならないほどに悪化しており、検査の結果彼は退行性骨関節疾患を患っていることが判明。
ペリーは人工股関節置換手術 (en) の必要に迫られたが、なかなかその決断ができず、かといってその体ではツアーを再開してもステージに立つことすらおぼつかないというジレンマのなかで時間だけが浪費されていった。
一方ジャーニーの他のメンバーたちは、カムバックツアーがいよいよ調子に乗り始めていた矢先にバンドの「顔」が引き蘢ってしまうという事態に業を煮やしていた。
ツアーの度重なる延期を1年半にもわたって訴え続けたペリーに対し、結局他のメンバーたちは、早急に手術を受けて体を直すか、さもなければ代替ボーカルを探すことに同意するか、という最後通牒同然の二者択一を迫った。
「俺は今後の人生を左右しかねない重大な健康問題に直面して苦悩しているというのに、他のメンバーたちにとってはそんなことよりもバンドの興行収入を確保することを優先するのか」というペリーの怒りと落胆が、彼にジャーニーとの決別を決意させる決定的な理由になった。
”ジャーニー / Journey” は、2017年に「ロックの殿堂」入り
2017年、ジャーニーは ”ロックの殿堂 / The Rock and Roll Hall of Fame and Museum” 入りを果たしました。
同年4月に開催された、殿堂入りの記念式典では、スティーヴ・ペリーの動向に注目が集まりました。なぜならスティーヴ・ペリーは、1998年の脱退後にメンバーと絶縁状態になり、表舞台にほとんど出てこなくなっていたからです。
ロックの殿堂入り式典の舞台に登場、スピーチを行ったスティーヴ・ペリー
結果として、スティーヴ・ペリーは殿堂入り祈念式典の舞台に立ち、スピーチを行いました。
スティーヴ・ペリーが(仲違いしていた)かつてのメンバーとも笑顔で功績を称え合う姿を見て、往年のファンは感無量だったに違いありません。
peeches – 2017 Rock Hall Inductions
スティーヴ・ペリーは現在のボーカル”アーネル・ピネダ / Arnel Pineda”を称えた
しかし、殿堂入り式典の舞台で、スティーヴ・ペリーは歌いませんでした。2007年からジャーニーのボーカルは、フィリピン人の ”アーネル・ピネダ / Arnel Pineda” です。スティーヴ・ペリーはアーネルピネダに配慮して歌わなかったとも考えられます。
(参考: 「マニラの奇跡」アーネル・ピネダがジャーニーへ加入した経緯 )
スティーヴ・ペリーは、スピーチの中でもアーネルを称えています(19:22~)。
・・・I must give a complete shout out to someone who sings his heart out every night, and it’s Arnel Pineda. Where are you, Arnel? Where are you? He must be backstage. To Arnel, I love you. ・・・
RollingStones誌、ニール・ショーンのインタビュー記事
音楽雑誌RollingStones記者の質問「スティーヴ・ペリーは30年前みたいな声で歌えないから辞退したのか? 感極まっていたのか?」に対し(ジャーニーのメンバー)ニール・ショーンは「キーは彼に合わせて演奏できるし問題ないんだ。彼は泣きそうだった。自分も涙を流していた」と語っています。
I think a lot of people were presuming he didn’t sing at the Hall of Fame since his voice isn’t what it used to be and he didn’t want to live up to what it sounded like 30 years ago.
Seriously, we can play in any key he wanted to play. I was aware, like everyone else was, that he went out a couple of years ago and played with the Eels. I noticed that the keys were lower, but there’s nothing wrong with that. It still sounded like him, very soulful. He’s got a very recognizable voice. Even when he was talking I was like, “That’s the voice.”
Why do you think he didn’t sing then? He was just overwhelmed by emotion?
I think so. He was tearing up. I was definitely tearing up. I had tears running down my eyes. I was trying to keep my composure on the stage for that event, but it was something that was too strong.
RollingStones ー ourney’s Neal Schon on ‘Emotional’ Steve Perry Reunion, Rock Hall Induction より引用
アーネル・ピネダ(マニラ出身)ホームレスからの「アメリカン・ドリーム」
ジャーニーの2018年現在のボーカルであるアーネル・ピネダは、ロックの殿堂入り式典の舞台裏で「憧れの」スティーヴ・ペリー本人と初対面しました。
スティーヴ・ペリーも後任のアーネルを称え、記念の演奏でのボーカルを委ねる・・・感動的な世代交代の場面です。