1980年代前半にヒットした洋楽にストーカー行為を歌った曲があります。現代なら物議を醸すであろう露骨な表現がなぜ当時は許されたのか? ストーカー行為を制限する法規制の整備時期を知れば理解できます。(文中敬称略)
’80年代に大ヒットした「ストーカーの歌」たち
日本ではバブル時代に突入する少し前の年代、1980年代の前半にヒットした洋楽には露骨な「ストーカー行為」を歌った曲があります。
代表的なものを時系列に3曲並べました。
1980年 REOスピードワゴン「キープ・オン・ラビング・ユー」
浮気をした女性に対し「何があっても愛し続ける」と、粘着を宣言する歌です。
REO Speedwagon – Keep on Loving You (1980年)
1981年 ホール&オーツ「プライベート・アイズ」
相手の女性に対し「とことん監視してやる」と脅しています。そもそも、プロモーションビデオの中でも、スパイの様な衣装をして歌っています。
Daryl Hall & John Oates – Private Eyes(1981年)
1983年 ポリス「見つめていたい」
相手の呼吸まで「すべてを見続けているよ」と不気味に脅しています。
The Police – Every Breath You Take(1983年)
なぜストーカーを礼賛するような曲が?
もしかすると現代でこんな曲がヒットチャートを駆け上ったら、嫌悪のコメントを拡散して、物議を醸すかもしれません。
これらの曲がヒットした1980年代には「ストーカー行為」という概念はありませんでした。存在していたとしても世間には全く認知されていませんでした。
好きな人に「つきまとう」行為そのものが「恐怖を与える」や「犯罪行為」だいう考え方もありませんでした。
当時に「セクハラ」や「パワハラ」という概念もなかったのと同じことです。
世界のストーカー規制の動き
ストーカー行為の法規制が初めて実現したのは、1990年のアメリカ(カリフォルニア)州です。
- 1990年、アメリカ(カリフォルニア州)「ストーキング法(anti-stalking law)」
- 1997年、イギリスで「嫌がらせ行為防止法」
日本では2000年に「ストーカー規制法」が制定されました。