ジョン・レノンが1971年に発表した名曲 ”イマジン / Imagine” のクレジットに、2017年に共作者としてヨーコ・オノの名前が追加されました。ジョン・レノン自身がヨーコ・オノの本『グレープフルーツ / Grapefruit』からコンセプトを得たことを明言しています。シンディー・ローパーも愛読していたポエム集です。(文中敬称略)
”イマジン / Imagine”はジョン・レノンとヨーコ・オノ(オノ・ヨーコ)の共作と認められた
2017年6月14日(アメリカ現地時間)、NMPA(National Music Publishers’ Association=全米音楽出版社協会)は”イマジン / Imagine” のクレジットに、ジョン・レノンの共作者としてヨーコ・オノを加えることを発表しました。
発表は、NMPAの100周年記念賞(Centennial Song award)表彰式
”イマジン / Imagine” にヨーコ・オノの名前が追加されるとの発表は、1917年設立のNMPAの ”100周年記念賞(Centennial Song award)”の表彰式の場で行われました。
生前にジョン・レノンが「イマジンの歌詞やコンセプトのヒントはヨーコから受けたものであり、彼女の名前も加えるべき」という趣旨の発言をしていたことを受けて、イマジンが記念すべき賞を受賞するタイミングで発表したのでした。
Another picture from the @NMPAorg Awards with @johnlennon in the pictures with me, and Sean and me onstage 🙂 Imagine!
love, yoko pic.twitter.com/FJj8E8yuty— Yoko Ono (@yokoono) 2017年6月19日
I’d like to say thank you to the National Music Publishers’ Association @NMPAorg for its courageous move.
love, yokohttps://t.co/0bkYu6CJpF pic.twitter.com/8WsrBKtoba— Yoko Ono (@yokoono) 2017年6月15日
上のツイートの右側の写真にトロフィーが2つ写っています。一つがジョン・レノン、もう一つがヨーコ・オノ。このトロフィーが授与されるシーンの動画を下に紹介します。
NMPAのセレモニーでのサプライズ演出~ヨーコオノ(オノヨーコ)表彰
NMPA(全米音楽出版社協会)の表彰式におけるヨーコ・オノの表彰は、感動的なサプライズ演出が用意されました。流れは次のとおり。
1.NMPAのCEO ”デヴィッド・イスラエライト / David Israelite” が『イマジン / Imagine』の「Centennial Song award」(100周年記念賞)受賞を発表し、ジョン・レノンの名が刻まれたトロフィーを車椅子のヨーコ・オノに授与する。
2.ステージのスクリーンに、1980年にジョン・レノンが生前に残したBBCのインタビュー映像が流れる(動画では音声のみ)
「驚くことに実は、あれ(イマジン / Imagineの曲の作者)は ”Lennonono(レノン/オノ)” と表記されるべきだった。歌詞やコンセプトの大部分はヨーコから来ていたんだ。
あの頃の自分は今よりちょっと自己中心的で、ちょっと男らしさを履き違えてたから、彼女の貢献についてあえて言及しなかった。
でも彼女の本、『グレープフルーツ』からまるまる着想を得ていた。“Imagine this”(これを想像してごらん)、“Imagine that”(あれを想像してごらん)って(言葉が本の中には)たくさん出てくるんだ」
3.NMPAのCEOが「イマジンの共作者としてヨーコ・オノの名前がクレジットされる」と発表し、ヨーコ・オノの名が刻まれたトロフィーを授与する。
NMPA 2017: Yoko Ono and Sean Lennon accept the Centennial Song Award for “Imagine”
息子のショーンはジョン・レノンにそっくり
それにしても、ヨーコ・オノとともに表彰式に出席した息子のショーン(Sean Lennon)は(髪型のせいもあるでしょうが)ジョン・レノンにそっくりです。最初に写真を見た時は「あれ? いつの時代の写真だろう?」と妙な錯覚を覚えてしまいました。
『グレープフルーツ』→ジョン・レノンがインスピレーションを受けた本
ジョン・レノンが ”イマジン / Imagine” の歌詞やコンセプトのヒントを得たと言及したヨーコ・オノの本が『グレープフルーツ / Grapefruit』です。
もとは、1964年に500部の限定版として東京で出版された本。現在でも購入できるのは、1970年に加筆されて発売されたバージョンです。
「・・・しよう(しなさい)」という行動の指示を短い詩を繰り返す内容。「Imagine・・・」から始まる詩も(ざっと数えて)7つほどあります。
この『Grapefruit』が名曲”イマジン / Imagine” のヒントになったというエピソードは、たいへん説得力があります。
シンディー・ローパーも影響を受けた本
アメリカの人気アーティスト ”シンディー・ローパー / Cyndi Lauper” も、ヨーコ・オノの本『Grapefruit』に影響を受けた一人です。
2012年に出版された自伝『トゥルー・カラーズ / True Colors』の冒頭部分にはっきりと書かれています。
「わたしは17で家を出た。持っていったのは歯ブラシ、替えの下着、リンゴ、そして『グレープフルーツ』というオノ・ヨーコの本だけ。『グレープフルーツ』はわたしにとって、芸術を通じて人生を見るための窓になっていた」という書き出しで始まるシンディ・ローパーの自伝。
『グレープフルーツ・ジュース』は抜粋の翻訳版
日本では講談社から『グレープフルーツ・ジュース』という本が出版されています。この本は原書『Grapefruit』から抜粋(目分量で3分の1くらい?)した詩の翻訳文と、33人の写真家とコラボレーションした写真を付けた、別の本です。
私は黄色のハードカバーの『Grapefruit』と『グレープフルーツ・ジュース』の両方とも持っています。文庫本サイズの『グレープフルーツ・ジュース』は、手軽に読めますが、オリジナルが持つ独特な雰囲気は伝わらないかな? と思います。